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2・ターザン〜白い肌〜

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2009年の作品

彼の名前はターザン。
彼の部族の類人猿の言葉でいう「白い肌」という意味。

カラに拾い上げられた彼はカーチャクをボスとする類人猿の群れで育つ。
カラの愛情だけが彼の命を守る。
成長が遅く弱々しい人間の子どもは淘汰される。
群れの中でのやっかいもの。

やがて彼は非情なジャングルの掟の中たくましく育つ。
だが彼は少しずつ気づいていた。
自分が他の仲間達と違うことを。

すべすべの白い肌。
泥を塗ってごまかした。
だけどある日、水辺で気づいた。
自分の顔の醜さに。

水面に並んで映ったのは英国貴族の血をひいた高貴な顔立ちの少年と類人猿の毛むくじゃらな顔。
仲間がうらやましかった。

群れの異端児。
カラの夫のチュブラットはことあるごとにこのカラの養子の命を狙う。
ボスのカーチャクもこころよく思ってはいない。

群れの移動の時に、ときどき通るあの浜辺の小屋。
類人猿たちの記憶は曖昧になり、すでにターザンとこの小屋を結びつけることはなかった。
カラを本当の母と慕うターザン。

ずっと気にはなっている浜辺の小屋。
だが、入る所がない。
彼は小屋の一カ所だけが他と違うことに気づき、彼はそのドアをあける。
中には横たわる2体の白骨。
そしてゆりかごの中の小さな骨。

彼にとっては死は日常茶飯事。骨など興味もない。
それが父と母の骨だとしても驚きはしない。
亡父の残した物とは知らず少年グレイストーク卿は小屋の中の物を探索するのだった。

その中にあったナイフ。それで指先を切った彼はそれの威力と使い方を知る。
小屋を出た彼は群れに戻る途中、ゴリラのボルガニと遭遇。
逃げる間はない。
だが少年ターザンの手には亡父の残したナイフが握られていた。

死闘の末、ナイフはボルガニの心臓を止めていた。
だが彼もひん死の重傷。肋骨が折れ、肉は牙で裂かれ、首筋は頸動脈が見えるまで噛まれていた。

ゴリラとターザンの死闘は群れにも聞こえていた。
彼の元へ走ったのはカラだけ。
カラはひん死の彼をかかえて戻る。
水を口移しであたえ、傷口をなめ、ずっと付き添った。
野獣にはそれしかできなかった。

母親の愛情が無ければグレイストーク卿の遺児はこのままジャングルで朽ち数奇な運命もここで終わったことであろう。
群れから少し離れ彼は野獣の克己心でじっと耐えた。
自分を犠牲にし彼を看病しつづけたカラは見る影もなくやつれた。

カラの愛情は浜辺の小屋で死んだターザンの母、アリス・ラザフォード貴婦人と変わらなかった。
やがて彼はその傷も癒え、亡父の小屋へとまた通うのだった。

*このターザンの物語はただの冒険譚ではない。
今、これを読むと別の立場で心にくるものがある。

彼の孤独や自身のアイデンティティーの葛藤、彼自身の気づかぬ高貴な遺伝への戸惑い。
それが想像できてなぜか胸が疼く。

by motibito03 | 2017-07-08 21:50 | ★『クロニクル』ターザンの絵物語