Return Of Tarzan 6
2017年 07月 11日
類人猿の広場に宝物を埋めたターザンは父の小屋付近にいた。
彼の鋭敏な嗅覚はライオンと白人をキャッチする。
かけつけてみると男女の白人をライオンが狙っていた。
男は頭をかかえてうずくまり後ろ向きの女は祈っていた。
時間はなかった。
彼は槍を後ろに構えるとライオンに向けて投げつけた。
女が顔をあげた。
それは彼の愛する女だった。
まさか、こんなところに…
男がジェーンを抱き寄せようとする。
ターザンはカッと血が逆上するのを感じた。
ターコズにやられた額の古傷が怒りで赤く燃える。
野生の世界では自分の女が他の男の腕の中にあったらやるべきことはひとつ。
凄まじい形相で彼は矢をつがえると弓を引き絞り男の心臓を狙った。
だが、矢は放たれなかった。矢の先端がゆっくりと下を向き、弦がゆるんだ。
燃えた額の古傷が消える。
がっくりとうなだれた彼はジャングルへ消えた。
まだ癒えぬ傷がまた深くえぐられた。
もう二度と人間と会いたくなかった。
自然の中にいだかれ、野獣のように耐え忍んで傷を癒したかった。
彼が育った類人猿の群れに戻るターザン。群れは再びターザンを主導者に選ぶ。
幸せではなかったが、満足した。
文明へ戻る意思はとっくに捨てていた。
類人猿として再出発し、類人猿として死のう…
彼はそう思うのだった。
*どこにも安住の地はなく、血統も捨て愛する女もあきらめひっそりと密林で生きていこうとする彼に胸が痛くなります。
テレビや映画のターザンはどこまでも明るく単純で片言しかしゃべらないイメージ。
原作の彼は博学でまた数カ国語をあやつる国際人。
そして小説の中では彼が苦しむ姿がよく見られるのです。
野獣の残酷さ、冷徹さを持ち、だがそれと血統の持つ高貴さと繊細さとの葛藤も彼の苦しみ。
生来の優しさは血統ではなく野生の中で身についたもの。
そういう彼をわたしは紹介したいのです。
by motibito03
| 2017-07-11 20:35
| ★『クロニクル』ターザンの絵物語